「凄い先輩の電話トーク」

新人時代

凄い先輩がたくさんいて、私は恵まれた。

その一人がＡさんと言う人だ。

会社を経営していたが倒産して

当時のリクルート人材センターに入社された。

３０万円で下取りした医療機器を

ピカピカに磨いて８０万円で売っていたそうだ。

ＡさんのＴＥＬアポトークはおもしろかった。

Ａさん：「リクルートのＡです。

　　　　 先日お使いいただいた求人広告の効果測定をさせていただいております。」

社長：「え！！　何だって？」

Ａさん：「モノクロ２ページという大きな投資をいただき

誠にありがとうございます。

　　　　 私どもは、それ相応に広告の反響があったか？

　　　　 人材のご採用は成功されたか？

　　　　 そのような事を調査させていただき

今後の反省材料にしております。」

社長：「あっそう？　それはご丁寧に。」

Ａさん：「ところで、応募者数は何人ぐらいだったしょうか？」

社長：「そうだね、確か２０人ぐらいだったかな？」

Ａさん：「たった！！」

社長：「え！！ 『たった！！』 とはどういう意味だね？」

Ａさん：「申し訳ございません。　

　　　　 モノクロ２ページで８０万円も投資していただいた割には

　　　　 応募者が少ないと思いまして。」

社長：「そうなの？　２０人じゃ少ないの？」

Ａさん：「はい、少ないですね。

　　　　 ところで、ご採用できた人数は何人でしょうか？」

社長：「うん、２人だったよ。」

Ａさん：「たった！！」

社長：「ちょっと君、その 『たった！！』 とはどういう意味だね？」

Ａさん：「いやー、８０万円も投資いただきながら

たった２人とは申し訳ございません。」

社長：「え！！　２人じゃ少ないの？」

Ａさん：「はい。

　　　　 全然駄目ですね。

　　　　 それは大失敗です。」

社長：「え！！　大失敗って君の会社の求人広告を使ったんだよ！！」

Ａさん：「大変失礼しました。

　　　　 ただ、私が御社の担当だったら

そんな大失敗は絶対にさせません！！」

社長：「え！！　担当の営業マンによってそんなに違うの？」

Ａさん：「はい。

　　　　 申し上げにくいお話ですが

未熟者や手を抜く者もいますので・・・。

　　　　 本当にお恥ずかしい限りです。」

社長：「え！！　それは聞き捨てならない話だ。」

Ａさん：「御社の担当は、リクルート渋谷営業所のＢですよね？

　　　　 最近ちゃんとお邪魔しておりますか？」

社長：「いや、そう言えばこの１ヶ月ぐらい来てないな。」

Ａさん：「やっぱり？」

社長：「ちょっと君、その 『やっぱり？』 とはどういう意味だね？」

Ａさん：「やっぱり大失敗したので、足が遠のいているんですよ。」

社長：「え、そうなのか！！」

Ａさん：「大変申し訳ございません。

　　　　 早速私がお詫びに伺います。」

社長：「え！！『お詫び』って言われても。」

Ａさん：「社長、今回の失敗を放置してはリクルートの恥です。

　　　　 私の気持ちがおさまりません。

　　　　 それでは今から伺います。」

これを横で聞いていると笑ってしまう。

「たった！！」 とか 「やっぱり？」

を連発する危ないトークだ。

風貌も大柄で頭髪が薄く

ダブルのスーツに太いド派手なネクタイで

２０代だったのに４０代に見えた。

まるでちょっとその筋の人だ。

Ａさん：「武谷、お前、服装が地味だから売れないんだよ！！」

私：「えー！！　そんなに地味ですか？」

Ａさん：「背広もネクタイも真っ黒じゃねーか？　地味すぎるぞ。」

私：「えー！！　これでも一応コムサデモードなんですけど。」

Ａさん：「何だその『コムサ』って？

　　　　 それいくらだ？」

私：「７万円ぐらいかな？」

Ａさん：「バカヤロー！！

そんな地味な背広に７万円も払うな！！

　　　　 俺なんか長崎屋の背広で１万円、ネクタイは千円だぜ！！」

私：「すごい安いですね？」

Ａさん：「そんな安く見えないだろう？」

私：「はー、まーそうですね。

　　 Ａさんしか着こなせないですよ。」

Ａさん：「営業は初対面で決まるんだぞ。

その時点でインパクトがある俺の勝ちだな。」

勝ち負けは別として

「営業は初対面で決まるんだよ」　

というのは確かに一理ある。

Ａさん、しばらく会ってないけど

お元気かな？

ひ弱な私に喝を入れていただき

大変お世話になりました。

「批判はしたけれど　

自分にできるだろうか」　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　みつを

合掌。